「AIが作詞した“国民的ヒット曲”をめぐる騒動」
- news writer
- 3 日前
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音楽配信サイトで突如ランキング上位に食い込んだ一曲が、Xで大炎上した。タイトルもメロディもキャッチーで、多くの人が「新しいスターの誕生だ」と期待を寄せたが、後に明らかになったのは衝撃的な事実だった。アーティスト名は新進気鋭のシンガーソングライターと紹介されていたものの、その楽曲はすべてAIによって生成されていたのである。メロディは作曲AIが統計的手法で組み立て、歌詞は大規模言語モデルが紡ぎ出し、歌唱は音声合成によって表現された。つまり人間が直接手を加えた部分は、ほとんど存在しなかったのだ。
この事実が拡散されると、SNSは賛否両論で騒然となった。「人間が関与しなくてもここまで完成度が高いのか」と驚嘆する声がある一方、「感情を持たないAIが“心に響く歌”を生み出すのは欺瞞だ」と強く批判する意見も少なくなかった。興味深いのは、その間にも楽曲の再生数は伸び続けたことである。ファンの中には「AIでもいい、名曲は名曲だ」「響いた気持ちは偽物じゃない」と肯定する意見も根強く見られた。
議論の核心にあるのは「創作の定義」である。音楽は古来より人間の感情や経験を表現する芸術とされてきた。しかしAIは、人間が感動しやすいコード進行や歌詞のフレーズを膨大なデータから学び、いとも簡単に量産してしまう。結果としてリスナーは「心を動かされた」という体験を得る。ならば、その価値は本物と言えるのか。あるいは、背景を知った瞬間に価値が揺らぐのか。ここにAI時代特有のジレンマがある。
同時に、音楽産業への影響も無視できない。AIが安価に高品質な楽曲を供給できるようになれば、従来の制作プロセスやアーティストの存在意義が再定義されることになる。すでに一部のレーベルではAIを補助的に利用する試みが始まっており、今後は「人間×AIの共同制作」が主流になる可能性も高い。だが、今回のように「ほぼAIだけで作られたヒット曲」が登場すると、そこに人間がどう意味づけるか、文化的な議論は避けられない。
AI作曲は今後さらに洗練され、商業的にも拡大していくことは間違いない。重要なのは、その過程で「人はAI作品にどう価値を見いだすのか」という問いにどう向き合うかだ。単なる技術の問題ではなく、倫理や文化の領域にまで踏み込む議論が求められている。今回の炎上は、その序章にすぎないのかもしれない。
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